縦ログ構法を広めよう写真 はりゅうの箱
「縦ログ構法」は、木材を地域の工場で一定の大きさに切り揃え結束し、木の壁(パネル)をつくり、建築を建てる構法です。 なぜ私たち「縦ログ構法研究会」※が、「縦ログ構法」を広めようとしているのか。それは、この無垢材「打放し」の新構法が、森・まち・産業を変える可能性があるのではないかと感じているからです。 縦ログ構法は、木を塊で使うため、まず国内林業がまわり始めます。 また、近年注目を集める加工木質材料のように大きな設備投資を必要せず、在来構法の住宅を生産してきた小規模工務店でも製作可能です。 縦ログ構法は、過疎化が進む地域を、小さなネットワークで変えるローテクな構法であり、建築生産の枠組みを大きく変える可能性があります。 ※縦ログ構法は、はりゅうウッドスタジオだけではなく、設計者の有志による「縦ログ構法研究会」(特定非営利活動法人 福島・住まいまちづくりネットワーク)によって普及・構法研究活動を行なっています。
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縦ログ構法で製作する木パネルは、150mm角程度の正角材、あるいは平角材を結束してつくります。この規格は、在来工法の柱など使用されるサイズであり、地方にある製材所で加工・出荷することができます。縦ログ構法の材料が、地方の中小規模の製材所でも製作しやすいということは、建設業者や施主にとっても安価に材料がまかなえるというメリットがあります。
一般的な製材所での製材の様子
製材後、木材は2-11本程度を束ねてパネル化します。パネル化の作業は工務店などの工場で行い、現場ではこのパネルを組み立てて建築をつくります。縦ログ構法は、製作工程の標準化—つまり、高性能な建築をあらゆる場所で同じように簡単につくれるようにという考えのもと、開発された構法です。そのため、木材のパネル化は非常に簡単で、現場での組み立ても高度な技術を要しません。
パネル化した木材を組み立てる
縦ログ構法は、パネル構法ですが、法規・構造の考え方は在来軸組構法に則っています(パネルの両端にくる木材を柱とみなした、柱付きパネルとなっています)。
また、丸太組構法の場合は、ログが自重で下がるため、在来構法の一部分に丸太組構法を組み合わせることが難しいです。その点、縦ログ構法は、建物の壁のすべてを縦ログ構法パネルとしなくても、在来軸組構法を主にしながら部分的に縦ログの壁パネルを使うこともできます。
在来構法の軸組のなかで縦ログパネルを使うことができる
縦ログ構法の空間的な最大の特徴は、防火の規制のなかで、「木打放し」ともいえる量感のある木あらわし仕上げの空間・外観ができることにあります。このような仕上げができるのは、縦ログパネルが優れた準耐火性能をもつためです。
現在のところ、内外を木あらわしにできる準防火構造認定を取れている構法は、丸太組構法を除いて、他にはほとんどありません。内部を木あらわしにすることで、心地よい室内空間ができ、外部が木あらわしの建築が増えることで、自然素材に囲まれた街や都市をつくることができます。
1時間準耐火試験後の試験体の様子。1時間に60㎜燃え進む。黒く炭化した層が延焼を防ぐ
2014年からの開発当初は、壁倍率2.0倍でした。その後、パネルの組み方を工夫することで、約4.7倍まで強度を増すことができています。2017年現在は、中大規模の建築でも縦ログパネルが使えるように、より高さがあり、より高い壁倍率のパネルを開発しています。これにより、3階建てくらいまでの集合住宅や、中低層の施設などへも使用可能になってきています。
左:(株)日本住宅・木材技術センターにおける試験の様子 右:耐力壁パネル構成図
丸太組構法は、木を積み上げて建物をつくるため、汎用性という部分では難しさがありました。構法としても非常に個性が強く、たとえば、出隅に「ノッチ」と呼ばれる出っ張りが出るため山小屋風に見えたり、乾燥が進むことで壁の縮小化「セトリング」が起こるため建具まわりに隙間を事前につくっておく必要がありました。縦ログ構法は、丸太組構法のよさを引き継ぎつつ、これらの課題を解決する構法として考えられました。
縦ログ構法では、このような課題を解決したほか、壁式構造ではなく、在来構法をベースにした軸組構造として発展させることで、自由度の高い構法とすることができました。たとえば、部屋の大きさ、窓の取り方などで、丸太組構法よりも自由度を発揮します。
丸太組構法と縦ログ構法の違い
縦ログ構法は、着想は丸太組構法ですが、開発は在来構法をベースとしているため、そのよい特徴を多々引き継いでいることはすでに紹介した通りです。製材から設計、建設まで、日本の工務店が最も慣れ親しんだ在来構法をベースにすることで、取り組みへのハードルを下げています。
在来構法との違いとしては、乾式パネル工法による建設の簡易さと工期の短期化が望めること、「木打放し」の量感ある木あらわしの高性能な空間がつくれることといえます。
在来構法と縦ログ構法の製作工程の違い
CLTは、「Cross Laminated Timber(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)」の略で、板の層を各層で互いに直交するように積層接着した厚型パネルのことです。昨今の日本の政策では、中大規模の建物を、このCLT パネルを用いて木造化しようと開発が進められています。木材を合わせて木質パネルをつくる点では縦ログ構法と似ていますが、目的や得意な分野は異なってきます。
まず、パネルのつくり方についてですが、CLT パネルは、木を接着剤で合わせてつくるため、最新鋭の大規模工場でハイテクの加工機械によってつくり、大量生産をすることが前提です。一方で縦ログパネルは製材所と工務店の連携でローテクな機械・技能によってつくられます。ローテクでできるからこそ、日本全国、どこの地域でも生産することができ、その結果地域に産業が根付いてゆくのです。
CLT構法と縦ログ構法の違い
現在、日本の森林は間伐不足によって、危機を迎えています。一度つくった人工林は、手を入れ続けなければ、荒廃してゆき、土砂災害などを引き起こす原因となります。また、管理が行き届かなければ、山から木を引っ張り出す費用が一層かさみます。そのため、海外の材木に比べて採算が合わないことから、国産材が流通しなくなり、管理できなくなり、また山が荒れてきていくという悪循環に陥ってきます。このような状況の日本の森林に対して、縦ログ構法は解決を導く可能性をもっています。
縦ログ構法のシステムが、過疎化する中山間地の資源を生かし、地域を変えられると私たちは考えています。
建築工事の工程で地域にできることを増やす