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土かまくらの家

SDレビュー 2010 入選

土のかまくらにより、温熱環境が安定した空間をつくっています。土塊が熱をためるという機能だけではなく、曲線となり、空間を構成するデザインとなっています。

建物概要
用途:専用住宅
延床面積:110.46㎡(1階建)
構造:鉄骨造+木造
設計:はりゅうウッドスタジオ
総工費:〇〇万円

敷地は福島県南会津郡南会津町。

冬の重圧的な風景のなかで、温かな生活を包みこむかまくら。

谷型にカーブしたコルゲートの屋根が、緩やかに繋がり、洞窟のような室内空間をつくる。曲面天井により分節された室内は、大きなワンルームとなって、住まい手の生活に寄り添う。屋根の窪みには、建設残土を入れ、雑草が覆い、締め固められる。屋根の上の土は、大きな蓄熱体となり、北国の室内環境を穏やかに保つ。

雪が積もれば、空気を含んだ雪は断熱材として働き、より一層蓄熱層を保護する。冬期の熱負荷を出来るだけ減らし、暖かく暮らす性能を、自然現象により獲得している。

土かまくらの屋根は開かれた土塊である。

屋根に掛かる雪荷重、蓄熱体(土+山砂)荷重は、U型形状に成型されたコルゲート鋼板フリュームによるシェルで支持する。モデル作成 エーユーエム構造設計 濱尾博文

設計コンセプト
七ヶ岳を望む棚田の休耕田に建つ。
海抜700M。東北屈指の豪雪地。真冬の気温は、マイナス20度を超え、積雪は2m、棚田は一面のパウダースノーに包まれる。
夏の気温は25度前後で、湿度は低いが、朝晩の寒暖差が激しい。
設計のポイント
1.土のかまくらにより、温熱環境が安定した空間をつくっています。
2.土塊が熱をためるという機能だけではなく、曲線となり、空間を構成するデザインとなっています。
3.夏にはもう一枚の棚田が出現します。
近年の建築はお互いの影響範囲を狭まれ、建物と風景の相互関係を失いつつある。それらは都市部に限らず、地方や山間部の例を見ても抵抗の跡は少ない。それらは性能とコスト面での効率化を主と考えた一つの答えなのかもしれないが、資材の流通と造る人間と考える人間の意識の中に、流れを変えるべき要素を見つけ出せないように感じられる。
地域文化やデザインという観点から考えた場合に、土かまくらの家は、地域文化を極力排除したものである。人間が持つ空間認識力と自然が作り出す景色に対等な関係があるのではないかと感じるような装置的な建築である事を目標としている。
一般的に土着性とは、代々に伝える風習のように、自発的な意識を取り入れず、時間的概念は永く継続され、より集団性のあるものと捉えられている。近年の核家族化と社会生活は、土着性に対する意識を消滅する事に拍車をかけるだけであり、無個性な流れに抵抗する事が、個人の好みやデザインが全てと考える傾向さえみられる。
敷地の選定に関しては、シンプルな小規模な家であっても、風景と建築空間を繋げて、住む人間の意識を、区切られた時間枠の中に風景の中に位置づけるプログラムを形成する事を前提とした。
生活する人に周辺の風景を強く意識させ、その土地に住み着くという(土着)意識としての一つの形を示したいと考えている。

 

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