Photo by Shinkenchikusha 東から俯瞰する。4つの木造戸建てから成る小規模集落モデルで、各棟それぞれが復興住宅への応用を視野に入れ解体・移築可能な木質工法を採用。左から時計回りに、「WOOD ALC構法棟」、「在来パネル構法棟」、「縦ログ構法棟」、「丸太組構法棟」。
Photo by Shinkenchikusha 縦ログ構法棟から見渡す。それぞれ特徴をもつ4棟は中庭に向かって開かれ、さらに屋根を中庭側に傾斜させ軒高を可能な限り揃えることで、全体にまとまりをもたせている。南側の通りに面するWood ALC棟は道からも内部の様子が見えるようにして、「福島住まい・まちづくりネットワーク」の活動を周囲にも伝えるもを果たす。東側の通りに面する丸太組構法棟はギャラリーとして、縦ログ構法棟と在来パネル構法棟はおもに宿泊棟としての機能をもつ。
Photo by Shinkenchikusha 450mm幅のWOOD ALCの壁柱からなる内観。WOOD ALC(Attain Low Carbon society の略)とは厚120(または厚60)×幅450×長さ4,000、長さ方向には継ぎ目のない、厚さ約25mmのラミナを積層した木製集成版。
Photo by Shinkenchikusha 「丸太組構法棟」内観。約120×120mmの丸太材をほぞを切って積み上げ、ボルトで緊結して構造と仕上げを兼ねている。床には断念材としておがくずを入れ、一部ガラス張りにして見えるようにしている。
Photo by Shinkenchikusha 台所1からリビングを見通す。
Photo by Shinkenchikusha リビング1。2層吹抜けの天井高は4mで流通材の規格寸法から決まっている。
Photo by Shinkenchikusha リビング2。
Photo by Shinkenchikusha 正面に縦ログ構法棟、左に在来パネル構法棟、右に丸太組構法棟を見る夕景。
Photo by Shinkenchikusha 南側道路からみるWOOD ALC棟。
小規模コミュニティのモデル建築群
この建築群は、東日本大震災並びにその後の原発事故の影響で現在も避難されている方を対象とし、福島県の仮設期から復興に向けての住まい・まちづくりの支援を目的とした、難波和彦、嶋影健一、八木佐千子、浦部智義、はりゅうウッドスタジオをコアメンバーとする県内外の建築関係者有志により設立された団体(NPO法人 福島住まい・まちづくりネットワーク)の活動拠点である。われわれの支援活動は、復興を目指す自治体や生活再建を目指す避難住民、また福島県内で復興活動に従事する建設設計者・施工者に対して行っており、各専門家の知恵を結集し、復帰に向けた方策や今後の住環境の選択肢の幅を広げることを目的としている。その拠点自体も、避難者の方が元の地域に復帰する際に応用可能な建築技術を試行した。具体的には4つを基本コンセプトを設定している。
1. 戸建の集合による小規模コミュニティの実践戸建ての各棟は、復興住宅等へ応用可能な木質構法の提案となっており、また、小さな戸建の集合によって集まって住める小規模コミュニティのモデルの実践にもなっている。
2. 解体・移築可能な木質構法モデル敷地に建つ「縦ログ構法」「在来パネル構法」「WOOD ALC構法」「丸太組構法」の4棟は、今後の避難者の復帰プロセスなどに柔軟に対応するため、解体・移築の可能な木質構法とした。また、特性の違う木質空間として木造の構法の幅を広げることも意識している。
3. エネルギーへの取り組み構法以外にも、アクアレイヤやペレットストーブの導入した棟、また、次世代エネルギー基準への対応を鑑みた棟やパッシブデザインを意識した棟など、環境やエネルギーに関しても、それらの計測・実験からの応用を意識している。
4. 仮設住宅の再利用モデルとしてこのモデルは、福島県に建設された約6000戸の木造仮設住宅の供与期間後の再利用の方策の一つとして見立てている。こうしたコンセプトのもと、構法面、エネルギー面においても柔軟な対応ができる状況を整えることで、避難者の今後の住まいに対する多様な要望に応えることを目指した。