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智恵子邸

減築により生み出された舞台

温泉のある集落の古民家を改修し、集落の拠点となる集会所としました。その際、できるだけシンプルな空間となるように減築しています。減築し、外部の空間に余裕ができた部分に舞台を設置し、新しい活動の拠点となりました。

建物概要
用途:集会施設
延床面積:120.11㎡(1階建)
構造:木造
施工:有限会社丸大建設
設計:はりゅうウッドスタジオ
総工費:

設計コンセプト
福島県天栄村の小さな集落に、茅葺きの民家と温泉宿が数軒残っている。
集落内の共同湯は村人のもので、中心にある数件の旅館は茅葺き屋根のまま、昔から旅館として使われ続けており、山間地集落に有りがちな閉鎖間とは違う、湯本独特の風景をかもし出している。
震災後、一度は中断した計画であったが、昨年再始動し、集落の為に空家を活用する目的として進められてきた。 主人を失ったこの建物は、通り添いに面していて周辺の住民にとっても思い出のある家であった為に、何代にも渡り引継がれたこの家は最後に住んでいたお婆さんの名前を取り、「智恵子邸」と呼ばれていた。
古民家を文化財として残す事や、古い生活の再現だけを目的とせず、その地域が持つ魅力を生む資源として古民家を活かすことを目標とした。
家族の生活の中心だった「座敷」を残し、茅葺屋根の輪郭を感じられる煤けた屋裏まで繋がる「土間」の上部空間に大きく手を加えた。明治から大正の時間を経過した原形となる土間空間と、裏庭の開かれた景色を繋ぐ為に、馬小屋跡と戦後に増築された下屋を減築した。周辺の地形に開かれた「舞台」要素として、それぞれが相互作用を生む連続した三つの空間とした。
この施設では季節毎に様々な催しに対応出来る。演劇や歌舞伎、古楽器等の演奏会に使われる事も想定し、庭、裏山、前面の通りにも客席機能を拡散できる。集落で受け継ぐ文化としての茅葺き継承の可能性を残す為に、軒先の茅葺きを補修再現した。裏山までの傾斜断面を原型化した地形舞台が完成した。数軒残される茅葺きの温泉宿と、周辺の茅葺民家が支える、これからの地域づくりの可能性を探るプロジェクトである。
設計のポイント
1.古民家を改修し、集落の拠点となる集会所としました。
2.できるだけシンプルな空間となるように減築しています。
3.減築し、外部の空間に余裕ができた部分に舞台を設置し、新しい活動の拠点となっています。
天栄村湯本地区について
本計画の対象となる福島県天栄村湯本地区は、須賀川市と下郷町を結ぶ国道118 号に接しながら、周辺は山々に囲まれており、棚田から鶴沼川までのゆるやかに傾斜する扇状地のような地形特徴的である。数件の茅葺き家屋の宿を中心として広がる集落には、中山間地の中で静かに湯本独特の風景形成している。本プロジェクトでは、発注者である天栄村役場と地元住民が意見交換の機会を持ちながら、古民家で行われるプログラムや運営方法・空間の利用の仕方やあり方についての検討が重ねられた。
地形舞台の可能性について
古民家の舞台空間は、棚田からの地形を利用した舞台、土間、座敷等の古民家の様々な場所を活用するとともに、空間を利用する演者に対しても、様々な働きかけを行なう。利用者は主に合宿で訪れる学校関係者や郡山・福島等の演劇関係者を想定しており、長期の利用も想定される。土間等については小屋裏を利用したフライタワー的な使い方も想定される。外部の舞台については土手を座敷とした舞台であり棚田とまちを繋ぐ場所でもある。隣地の民宿の客室からもこの舞台を見ることができるようになっている。

 

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