現在も町の広い範囲が帰還困難区域に指定される浪江町民 が、一時帰宅を行う際や帰還を希望する住民が短期~中期滞在することができる宿泊施設。
4戸1棟の元の間取りを活かしながら、中期滞在にも耐えられるしつらえとして、小屋裏ロフト空間を作ることで、天井高が確保された開放的な居室となった。
再構築後の内観を見る。元の間仕切りはできるだけ取り払い、本プロジェクトでは一室空間を目指している。屋根、水回り、空間についてもパネル化を図り、被災地域での工期短縮に配慮している。
ログ仮設住宅を再構築する
福島県双葉郡浪江町に、浪江住民が6年間使用した二本松市大平地区のログ仮設住宅を移転し、復興拠点をつくり出すプロジェクトである。木造仮設住宅は標準化されているが、一室空間でフレキシブルなシステムを持っているために、効率的でコストパフォーマンスの良い再築が可能である。
使われていた建物を、標準化された部位別に捉え、主となる構造体、部材、部品、素材、それらの強度、耐久性、防水性、蓄熱性能、熱伝導率、意匠的観点、感触等を遡って分析し考えることで、規模に関わらず、リフォームやリノベーションとは違った新しい可能性が見えてくる。
福島県でつくられた木造仮設住宅の場合も、運搬のしやすさ、防水性、施工性によって振り分けることで、結果コストを下げて利活用の意味や地域への拡散範囲も大きく変わってくる。今回の事例は、二本松市大平地区で浪江町住民によって使われていたログハウス型仮設住宅の、利活用事例のひとつでしかないが、仮設住宅で避難生活を送ったことがある人々にとっては意味のある試みとなる。